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構造主義科学論の冒険  池田清彦著 (毎日新聞社刊)

小生が専門分野の漢方医学・中医学を考える上で、もっとも影響を受けた書籍である。

それだけに愛着も深いが、反面、一部に大きな反発もある。

狭義の科学理論とは何か、を知る上で、これほど分かりやすい書籍は、ない、と思う。

ところが、一転、広義の科学を論じる段になると、ご自身が最も否定的に捉えられているはずの「イデオロギー」が続出するのである。

この論点は、狭義の科学を論じるうえでの大切な「第二章 現象と記述」のところでも、目に余るイデオロギーからの論述が入り込むので、充分に気をつける必要がある。

つまり、本書の最終章、「第六章 科学と社会」や、上述の大切な「第二章」などに、唐突としてイデオロギー的記述が入り込んでいるので、大いに警戒する必要がある。

これらのイデオロギーからの発言さえなければ、と惜しまれてならない。

イデオロギーを否定されながら、イデオロギーという色眼鏡で日本社会の本質を論断されたのでは、かなわない。

広義でものを考えるなら、人間の情や情念など、デリケートな問題まで包含されて、複雑多変である。
うかつに科学者が論及するべきではない分野かもしれない、と思わぬでもないが、まだ、カールー・ポパーが論じた社会論関連の諸論文「開かれた社会とその敵」や「歴史主義の貧困」などの方が、はるかに説得力がある。

広義の科学理論を論じるにしても、少なくともイデオロギーを含ませないで欲しかった。

繰り返すが、狭義の科学理論については、最高の賛辞を贈りたいのである。
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by cyos | 2005-08-29 13:23 | 科学理論とは何か