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私に影響を与えた良書・悪書・珍書・奇書・希書

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山本一郎著「情報革命バブルの崩壊」文春新書

 久しぶりに更新してお勧め書籍を掲載するくらいだから、いかに参考価値の高いものであるかを想像して欲しい。
 文章は流麗とは決して言えないどころか、むしろ判読しにくいやや悪文に近いものの、ことの本質を鋭く指摘して示唆に富む。

 内容をここで紹介するよりも、インターネットの利用者必読の書と言えるので、実際に入手して読まれることを強くお奨めする。二年ぶりの更新だから、その価値が知れようというものである。

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# by cyos | 2008-12-10 21:13 | 人間と人間社会の本質を知る

精神分析に別れを告げよう H・J・アイゼンク著(批評社刊)

 今月から待望?のフロイト全集が岩波書店から配本されはじめた。過去には著作集と名の付くものは複数出版されているが、全集として出版されるのは日本国内でははじめてのはずである。

 待望ということばに?を付けたのには、タイトルからも予測されるように、19年前に日本で翻訳出版されたこの「精神分析に別れを告げよう」(批評社刊)と題した行動療法の大家、H・J・アイゼンク著のフロイト批判の書物の影響による。

 副題にはご丁寧にも「フロイト帝国の衰退と没落」とある。

 小生、全くの門外漢ながら、フロイト及び新フロイト学派の研究と著作に常に刮目し好んで愛読しつつ、人間の心の深層の問題、神経症や心身症の問題、のみならず文学や芸術分野、社会心理学等を考察して来ただけに、出版された当初に直ぐ取り寄せて通読し、ひどくショックを受けた。
 フロイト理論の非科学性、のみならずフロイトのでっちあげ理論の数々の指摘、及び神経症治療等に対する精神分析治療の無効性など、フロイト及びフロイト学派に対する弾劾の書であり、一々納得出来る論証には腹立たしいくらいだった。

 翻訳者の七名の内、三名は実際に精神分析を行っている医学者であるだけに「本書は実に不愉快なしろものだった」とのあとがきは、その道のプロにとっては当然の感慨であろう。

 ということなのに、今月より岩波書店から配本がはじまったフロイト全集を全巻予約してしまった小生の深層心理とは・・・・・?行動療法とは無縁の世界じゃないの?

# by cyos | 2006-11-26 23:39 | 科学理論とは何か

自殺の誘惑から救ってくれた本:鈴木大拙著「禅の思想」

 
 
心は万境に随うて転ず。
 転処実に能く幽なり。
 流れに随うて性を認得すれば、
 喜びなくまた憂いもなし。

 これは初祖達磨大師の「二入四行観」の中に書かれている五言絶句であるが、本書「禅の思想」に取り上げられ、鈴木大拙翁によって解説されている。
 解説を読むまでもなく、これに目を通した瞬間に雷に打たれたように世界観が変わった経験を持つ。

 1960年代末の大学紛争が熱に浮かされたように日本全国を蔓延していた頃、あの馬鹿騒ぎに同調できないどころか、憎悪の念をいだき続けていた。
 そんな最中、突然、三島由紀夫氏が割腹自害により憤死された。
 
多言多慮、
 うたた相応ぜず。
 絶言絶慮、
 処として通ぜざる無し。

 三祖僧璨大師の「信心銘」のこの一節、その日、一日中頭の中で繰り返し唱えていたことが忘れられない。
 三島氏が亡くなった後、自殺する意味を失った。三島氏が亡くなった後の腑抜け国家の行く末を見届けてやろうと思った。
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# by cyos | 2006-10-20 21:12 | 本といっても様々

末期ガンになたIT社長からの手紙  藤田憲一著

 幻冬社から出版されたこの有名な書籍は、近くの小さな書店に早くから注文していたのに、なかなか手に入らなかった。注文を出して20日くらいはかかったろうか?
 さぞや再販を繰り返したものが届くことだろうと思ったが、意外に初版本だった。

 それはともかく、スキルス胃癌に罹患し、再発して余命3ヶ月と宣告された藤田氏が、現在も頑張ってテレビ・マスコミで大きく取り上げられているのは周知の通りである。
 
 ところで本ブログの筆者は職業柄(漢方専門薬局経営の薬剤師)、転移ガンや進行がんでQOL向上の目的から、当方の漢方薬を求めて長期間服用中の患者さんが大勢おられるので、藤田氏の苦悩や頑張りにこの書籍を通じて教えられることはとても多い。

 藤田氏の職業に対する執念には脱帽するばかりだが、当方で何年にも亙って転移ガンで苦労されている患者さん達の生き様と比較して見ても、彼ら彼女らも、決して引けをとらないことに驚いている。
 大学教授もいれば中小企業の経営者もおられるし、四十代で進行がんや転移ガンと闘っている人も多い。

 ただし、藤田氏のように三十代という若き患者さんは、過去には悪性リンパ腫や白血病あるいは睾丸腫瘍・子宮頸ガンなどでおられたが、現在は四十代以降の方ばかりで、過去、三十数年の仕事上でも三十代や二十代という方は、やはりかなり少ない。

 といっても、過去には子宮頸がんでなくなった二十代の女性や、悪性リンパ腫が9年目にして再発転移し、なくなられた方もいる。

 だから、決して、二十代・三十代の若さではガンや悪性腫瘍が無縁というわけではなく、進行して命を奪われることもない訳ではない。

 現在では、二~三人に一人はガンに罹るといわれる時代だが、その四割前後は根治しているといわれる。
 根治できない残りの6割近くの人にしても、当方の常連さんにも10年以上お元気で転移ガンや進行ガンと戦い続けながら本業を続けられておられる人が何人もおられるのが現実である。

 だから決して悲観するには及ばないのだが、それもガンの種類にもよるもので、藤田氏のようにスキルスとなるとやや別問題のところがあるようだ。彼は人並みはずれた気力によってガンと闘う免疫細胞が活発化してくれているのだろう、どこまでも頑張ってほしい。そして、同じガンや悪性腫瘍と闘っている人々に勇気を与え続けて欲しい。


関連ブログ:http://murata-kanpo.seesaa.net/article/20329781.html

     http://murata-kanpo.seesaa.net/article/20357579.html
# by cyos | 2006-07-05 14:01 | 人生の味わい

「中医病機治法学」陳潮祖著:自身の専門分野でもっとも影響を受けた書籍

 専門分野において、最も影響を受けた書籍がタイトルの「中医病機治法学」である。

 漢方と漢方薬を専門とする医師・薬剤師の必読書として常に推薦しているが、構造主義科学としての中医学の更なる可能性を大いに示唆してくれる最高の書籍であると現在も思っている。

 本書がいかに素晴らしいか、陳潮祖先生の「はしがき」部分の拙訳を以下に転載させて頂こう。
 一般の方にとってはチンプンカンプンであろうが、一定レベルの専門家であれば、この序文を読むだけでも漢方と漢方薬の無限の可能性を感じないわけには行かないはずだ。
  まえがき


 中医学の治療においては「弁証論治」を重視する。弁証のキ-ポイントは病機を把握することであり、論治のキ-ポイントは治法を確定することにある。このため病機と治法は、弁証論治の核心となるものである。

 本書では、五臓の生理機能にもとづき、発生した病理変化の病機と治法を解明している。とりわけ病機と治法は、理・法・方・薬の一連の繋がりにおける二つの重要ポイントであるから、学習者が病機と治法の原理を十分に理解することが出来るようになれば、実際の臨床時に理論と法則という確たる根拠を持つことができ、医療効果を高めるのに大いに助けとなることであろう。

 本書は上編の総論と下編の各論の二分野で構成されている。

 総論では、各種の病機体系と臓腑との関係を明らかにしたが、これは臓腑こそが病機体系の基礎であり、各種の病機体系は臓腑病機の中に統一されるべきもの、と考えるからである。同時に、病機と治法の共通性を検討し、病機と治法の関係を明らかにしている。したがって総論を理解して頂けば、各論における具体的な内容を十分に理解して頂けるはずである。

 各論では、五臓を中心に五大系統に分け、一系統ごとに一章を設け、別に二臓同病を加えて合計六章とした。各章ごとに生理機能を考察した項目を設け、病変が発生したときの発病のメカニズム{発病機序}を検討した。さらに病機にもとづいて治法を検討し、同時に成方の例をあげ、治法に対する具体的な実例を示した。

 各論では一一四条の「病機と治法」が含まれ、例方は六五七剤である。すべての病機を網羅しつくした訳ではないが、おおよその五臓の生理と病理の概略を知ることが出来るはずである。

 五臓の生理機能はいずれもそれぞれの特性を備えている。肺は気を主り、宣降{宣発と粛降}の働きがある。脾胃は納運{受納と運化}を主り、昇降{昇清と降濁}の働きがある。肝は血を蔵し、疏調の働きがある。心は神を蔵し、血脉を主り、明通{意識を清明にすることと、血液を流通させること}の働きがある。腎は精を蔵し、水を主り、蔵化{蔵することと、気化すること}の働きがある。これら五臓の生理機能はいずれも気血津液の生化輸泄{生成・輸布・排泄}に関係があり、「通」{流通}という共通した働きを示している。そしてこの基礎物質の生化輸泄に過不足やアンバランスが生じたときこそが病態なのである。五臓それぞれの特性と、五臓に共通した「通」という性質にもとづき、病機と治法を分析してみると一目瞭然であろう。それ故、五臓六腑は「流通しているべきもの」という命題こそは、病機と治法を分析する上での重要な指針となるものである。

 各病機においてはいずれも、①病因・病位・病性の三者を総合的に解明し、②気血津液の昇降出入と盈虧通滞の状況もあわせて述べ、③定位・定性・定量の三方面における病変の本質を明らかにしている。このため臓腑の生理病理を経とし、病因弁証・八綱弁証・気血津液弁証を緯とした構成をとっている。

 各治法については、病機をその理論的根拠として、①発病原因を除去し、②臓腑機能を調整し、③気血津精の疏通や補充を行う、という三方面から治法原理を明らかにしている。このため思考の筋道が通り、理解しやすくなっている。

 各臓の病機の分析を行うとき、それぞれの所で一つの新しい見解を提出しておいた。

 第一は、肺の宣降機能は他の臓腑と協調したり、他の臓腑を制約したりする。だからこそ「肺は相傅の官にして治節の権を司る」{出典は《素問・霊蘭秘典論》で「肺は相傅の官、治節これより出ず」とある。肺は君主たる心を助けて管理調節している、との意味}と言われるのである、との見解である。

 第二は、脾と胃はそれぞれ消化器系統の虚と実の二つの面を代表しており、またこれは「実するときは陽明、虚するときは太陰」の意味である、との見解である。

 第三は、肝の疏泄機能は気血津液精の五種の基礎物質の運行調節を統括管理しているが、このことは「肝が筋膜を主っている」ことと関連があるのであろう、との見解である。

 第四は、少陽三焦は膜原と腠理の二つの組織がまとまったもので、表裏上下のあらゆるところに存在している。そしてこれは五臓六腑・四肢百骸の組織と連絡し、津気が昇降出入する交通路となっている、との見解である。

 第五は、手の厥陰心包は大脳の機能が内在したものである、との見解である。

 第六は、気血津精という各種の基礎物質は五臓の機能活動の物質的基礎であるが、腎の気化機能はこの気血津精の生化輸泄に関与している。それだからこそ五臓が傷害されると、結局は必ず腎に影響が及ぶようになるのである、との見解である。

 第七は、五臓間の生克関係は、気血津液の生化輸泄{生成・輸布・排泄}状況のバランスに関わっている、との見解である。

 第八は、五臓六腑は「通」{流通しているべきもの}としての生理と病理の特徴がある、との見解である。

 以上の見解は、一部は先人の基礎の上に整理したり発展させたもので、一部は個人的な管見である。同行の諸兄に問題を提起し、中医学理論の深化に些かなりとも貢献出来るのではないかと愚考している。

 本書は中医学理論の専門書であるばかりでなく、臨床に直結した指導書でもある。中医学理論の研究と、実際の臨床面での参考に供するものであり、また中医学入門者にとっての参考書ともなろう。

 なお、この書では各病機と治法ごとに根拠を示して検索出来るようにしている。とりわけ《内経》などの書籍から原文を引用しての説明が多い。なるべく明快な病機の解説を心がけ、一部の内容については必要に応じて重複して記述した。もしも不足していたり誤っている所があれば、読者諸賢の御批判、御指導をお願いする次第である。

 総論の第一章の二、三節は、一九八二年に小生と鄧中甲氏と共に執筆した「臓腑病機概説」に手を加えて出来上がったものである。その中にはî中甲氏の労作の成果が含まれている。執筆中、沈湖祖氏、周訓倫氏、陳建平氏、田憶芳氏、呉平氏、賈波氏など、諸氏の指示を賜り、謝克慶氏には拙著ために序文を賜った。また、我が院の科学研究所と四川科学技術出版社の一方ならぬ御援助に預かった。ここに謝意を表する次第である。

           著者 陳潮祖
          成都中医学院において
             一九八七年六月

# by cyos | 2006-05-09 11:47 | 科学理論とは何か